- 上図のように照明光学系,試料ユニット,X線カメラを配置して,結像型X線顕微鏡をSPring-8にて構築した.照明光学系には全反射ミラーなどを用いて,試料に効率よくX線を照射できるようにしている.テストチャートの吸収コントラスト像を取得したところ,下図のような鮮明な画像を得ることに成功した(発表論文).約75nmまでギリギリ解像できている.本顕微鏡は色収差がない点が最大の特徴である.色収差がないことを確認するために7~12keVまでX線エネルギーを変更して観察した結果,分解能は変化しなかった.以上の結果は,世界で初めて色収差のない高分解能なX線顕微鏡を実現したことを意味する.
- 本顕微鏡の応用の一つして,顕微XAFSを実施した(発表論文).XAFSは,調べたい元素の吸収端近傍で,入射X線のエネルギーを変化させながら,その吸収を測定する手法である.本顕微鏡の場合,試料の吸収コントラストを取得しながらX線エネルギーを変化させるだけでよい.本顕微鏡は色収差がないため,X線エネルギーを変更する以外は,何も調整する必要がない点が画期的である.下図は,タングステン微粒子の顕微XAFSの結果をまとめたものである.視野全面にわたってXAFSスペクトルを同時に得ることに成功した.ある微粒子のXAFSスペクトルをプロットすると,その状態は純タングステンのものとよく一致したことから,この微粒子の状態はほとんど酸化などされていない純粋な金属であることが分かった.
- グラフ中のReferenceは純タングステンのXAFSスペクトルである.Uo
et al. の論文からデータを参照している.
研究成果の一例(論文・解説記事)
- ・【論文】波動光学シミュレーションでアライメント精度を調べた.(Nucl. Instr. Meth. Phys. Res.)
- ・【論文】波動光学シミュレーションで形状誤差などを調べた.(Proc. SPIE)
- ・【論文】1次元Wolterミラーを使って結像特性を確認.像面湾曲を調べた.(Opt. Lett.)
- ・【論文】AKBミラー光学系を使って結像特性を調べた.(Opt. Express)
- ・【解説記事】アクロマティック結像型硬X線顕微鏡の開発.(大阪大学低温センターだより)
- ・【解説記事】色収差のない結像型X線顕微鏡の開発.(X線結像光学ニューズレター)
- ・【解説記事】全反射ミラーを用いた色収差のない結像型硬X線顕微鏡の開発.(日本放射光学会誌)
- ・【論文】開発したX線顕微鏡を使ってテストパターンを観察し,分解能を評価した.(Opt. Express)
- ・【論文】開発したX線顕微鏡を使って微粒子の顕微XAFS分析を実施した.(Proc. SPIE)
- ・【論文】一体型結像ミラーの予備試験を実施した.(Proc. SPIE)
- ・【解説記事】高分解能かつ色収差のない結像型X線顕微鏡の開発.(SPring-8利用者情報)
- ・【論文】一体型結像ミラーを使って50nm分解能を達成した.(Sci. Rep.)
- ・【プレスリリース】色収差なし!全反射ミラーを使ったX線顕微鏡を開発.世界初 50nmの空間分解能で結像に成功.
- ・【解説記事】全反射結像ミラーを用いた色収差のないX線顕微鏡.(日本放射光学会誌)