- 結像型X線顕微鏡には,結像光学系が必要となる.我々のチームでは色収差・波面収差・コマ収差の点で優れているAdvanced Kirkpatrick-Baezミラー光学系を採用している.特に色収差がないという特徴は,このような全反射ミラー光学系のみが持ち得る重要な特徴である.
- Advanced Kirkpatrick-Baez(AKB)ミラー光学系は,2枚の楕円ミラーと2枚の双曲ミラーで構成されている.上図のように,それぞれのミラーは,互いに直交するように配置される.楕円・双曲が1つのペアであって,これを直交させることで,縦横の結像を別々に行う.この楕円・双曲の組み合わせは幾何学的に相性がよく,この2面に反射した光をすべて1点に集めることができる.さらに,2面で反射させたことで,アッベの正弦条件を満たすことができるようになり,これら2つの特性のため,良い結像(コマ収差がない)が可能となる.
- 高分解能を実現する上での問題は,ミラーの作製精度と,ミラーのアライメント精度である.我々のグループでは,EEMとスティッチング干渉計を用いて形状誤差(設計形状からの誤差)2nmで非球面ミラーを作製する技術を確立した.また,アライメント精度では,波動光学シミュレータを用いてアライメントを完全に理解し,必要な精度でアライメントできるミラーマニピュレータを設計・開発した.これによって高い精度でアライメントすることができるようになった.
- 本結像光学系がうまく開発できたことを確認するために,SPring-8にて,縮小結像光学系を構築し,点広がり関数を測定した.その結果,50nm以下の半値幅を達成することができ,ミラー作製・アライメントともに正しくできていることを確認した(下図).
- また,光軸方向に沿って結像特性を確認したところ,下図のような視野と分解能(点広がり関数の半値幅)の関係が得られた.焦点から0.5mm上流では,視野中心の結像特性が悪化し,逆に視野の外側ではよくなっている.これは像面湾曲の影響であり,シミュレーションの結果と良い一致を得た.この結果からも開発した結像光学系が設計通り構築されていることを確認できた.
- ・【論文】波動光学シミュレーションでアライメント精度を調べた.(Nucl. Instr. Meth. Phys. Res.)
- ・【論文】波動光学シミュレーションで形状誤差などを調べた.(Proc. SPIE)
- ・【論文】1次元Wolterミラーを使って結像特性を確認.像面湾曲を調べた.(Opt. Lett.)
- ・【論文】AKBミラー光学系を使って結像特性を調べた.(Opt. Express)
- ・【解説記事】アクロマティック結像型硬X線顕微鏡の開発.(大阪大学低温センターだより)
- ・【解説記事】色収差のない結像型X線顕微鏡の開発.(X線結像光学ニューズレター)
- ・【解説記事】全反射ミラーを用いた色収差のない結像型硬X線顕微鏡の開発.(日本放射光学会誌)
- ・【論文】開発したX線顕微鏡を使ってテストパターンを観察し,分解能を評価した.(Opt. Express)
- ・【論文】開発したX線顕微鏡を使って微粒子の顕微XAFS分析を実施した.(Proc. SPIE)
- ・【論文】一体型結像ミラーの予備試験を実施した.(Proc. SPIE)
- ・【解説記事】高分解能かつ色収差のない結像型X線顕微鏡の開発.(SPring-8利用者情報)
- ・【論文】一体型結像ミラーを使って50nm分解能を達成した.(Sci. Rep.)
- ・【プレスリリース】色収差なし!全反射ミラーを使ったX線顕微鏡を開発.世界初 50nmの空間分解能で結像に成功.
結像型X線顕微鏡(Full-Field X-ray Microscope)